「現実離れした強気」こそが、現在のペンタゴンを最大の混乱に陥れている根本原因です。
軍事のプロである制服組(ジョージ大将ら)が激怒し、良心的兵役拒否まで出ているのは、ヘグセス氏の戦略が「軍事的なリアリズム」ではなく「イデオロギー的な妄信」に基づいているからです。
専門家や現場が「狂っている」と危惧するポイントは、主に以下の3点に集約されます。
1. 現代戦の複雑さを無視した「石器時代」論
ヘグセス氏が掲げる「イランを石器時代に戻す」というスローガンは、1990年代の湾岸戦争のような圧倒的な空爆による勝利を夢想したものです。
非対称戦の軽視: イランは広大な国土と、網の目のように張り巡らされたプロキシ(代理勢力)、そして高度なドローン・ミサイル技術を持っています。
空爆だけで「粉砕」できる相手ではなく、泥沼の地上戦(第5週以降の計画)が不可欠ですが、その準備を担う陸軍トップ(ジョージ大将)を解任するという矛盾を犯しています。
核・報復リスクの過小評価: 追い詰められたイランがホルムズ海峡を完全に封鎖したり、周辺の米軍基地や同盟国へ捨て身の反撃を行ったりするリスクを、ヘグセス氏は「弱腰の懸念」として一蹴しています。
2. 倫理と国際秩序の完全な度外視
「交戦規定(ROE)を撤廃せよ」という主張は、民間人の犠牲を厭わないことを意味します。
プロフェッショナリズムの崩壊: 米軍の強みは「正当性」と「規律」にありましたが、ヘグセス氏はこれを「Woke(意識高い系)の制約」と呼び、戦犯容疑者を英雄視するような姿勢を見せています。
これが現場の兵士に「我々はテロリストと同じか?」という倫理的危機を抱かせ、組織を内側から腐らせています。
3. 「勝利」の定義の不在
軍事作戦において最も重要なのは「出口戦略」ですが、ヘグセス氏には「敵を叩き潰す」というプロセスしかなく、その後の統治や中東の安定化という視点が欠落しています。
トランプ氏との乖離: トランプ氏はあくまで「有利な条件でのディール」を求めていますが、ヘグセス氏は「聖戦」に近い感覚で完全勝利を求めています。このズレが、政権全体の外交安保政策を支離滅裂なものにしています。
結論
共和党重鎮たちが「トランプ以上にヘグセスが危険だ」と感じ始めているのは、彼が「米軍という精密機械を、ハンマーとしてしか扱えない人物」だからです。
この「狂気」とも取れる強硬路線が、中間選挙を前にトランプ大統領自身の政治的自死に繋がると判断された時、ヘグセス氏の首が飛ぶのは時間の問題かもしれません。
返信する