市場は崩壊し、ビジネスリーダーたちはパニックに陥っている。消費者は、ニュースを読んでいればの話だが、当然混乱もしくは恐怖している。それともその両方か。エコノミストたちはトランプ政権の関税政策を凝視し、どうにかしてその意味を理解しようと試みる。
ここで、その他の呆然(ぼうぜん)としている人たちに助言したい。意味を理解しようとするのはやめよう。
どういう理屈か? どうせ理解などできないのだ。我々がこれまで書いてきた通り、トランプ米大統領が定めた自らの関税政策のゴールは矛盾に満ちている。政権が貿易相手に対する「相互」関税の算出に使用していた計算式でさえ、数学というよりはパフォーマンスアートに近い代物だ。
米国の経済は世界の羨望(せんぼう)の的だが、トランプ氏はそれが他国による不公平な貿易慣行の犠牲者と考える。同氏の理論によれば関税こそ平等な競争を実現し、米国の製造業を復活させる一挙両得の手段だ。その点でトランプ氏の立場は揺るがない。仮にそれが米国経済をリセッション(景気後退)に突き落とすことを意味するとしても。
トランプ氏は関税が諸外国に打撃を与えると主張する。それは間違いではない。しかし同氏はこれまでのところ、関税が無用な罰則として米国人にものしかかることになるという事実に対し、無視を決め込んでいる。
どういうわけか米国政府は今、国内で生産できない製品について、米国人により多くの金額を支払わせようとしている。たとえばコーヒー。特定の種類のワイン。ハイテク産業に不可欠なレアアース(希土類)。他にも挙げれば切りがない。
そして恐らく最も非現実的なことに、トランプ氏は我々が過去数十年のグローバリゼーションをなかったことにし、既に海外へ移転してしまった製造業の仕事を取り戻せると信じているようだ(仮にそうした産業の「国内復帰」ができるとしても、それには長い年月がかかるだろう)。
ピーターソン国際経済研究所の上級研究員、メアリー・E・ラブリー氏は3日のブルッキングス研究所のイベントで、「戦略がない」「我々に自分たちの下着を自分たちで編めというのか?」と問いかけた。
「米国には製造業が必要と人々が口にするとき、彼らの念頭にあるのはハイテク企業であり、持続可能な仕事だ」。そうラブリー氏は続ける。低技能かつ労働集約型の仕事ではなく、そうした仕事は既に途上国へ移転されているとした。
その上で、誰でも帰宅して寝室に入る際、自分の着ている服がどこで作られたか確認すればいいと進言。それらの全ての国々に対し、米国は巨額の貿易赤字を抱えていると述べた。
~つづく~
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