「了解覚書」これは日本の対米投資5500億ドル(約83兆円)に関する文書であり、経済・国家安全保障上の利益を促進するために重要な分野に投資するというものである。
日本から見た場合のリスクは大きく3つあると考える。
1つ目
投資案件は米大統領が選定すると明記されている点である。
具体的には、米商務長官を議長とする投資委員会が大統領に投資案件を推薦し、大統領が投資案件を選定することが記載されている。
この過程で、日米両国から指名される委員で構成される協議委員会が投資委員会と協議するが、その声がどこまで反映されるか不明である。
また、大統領が投資案件を選定した場合でも、日本政府は資金を拠出しないことを選択できるが、この場合、大統領は新たな関税率を課すことができることになっている。
2つ目
各投資案件において特別目的事業体(SPV)を設立するが、このSPVの経営に関して「米国又は米国が指名する者がゼネラルパートナーとなって管理、統治する」と記載されている点である。
SPVの経営に日本の声がどこまで届くのか不透明である。
3つ目
損益分配に関する点である。
本覚書の文章では、「みなし配分額に等しい合計額がそれぞれに分配されるまで、米国に50%、日本に 50%」「その後、米国に 90%、日本に 10%」分配されるとある一方で、
仮にSPVが事業上の損失を出した場合、どのように損失を分配するかについて本覚書に記載がない。
SPVの出資者間で損失を分配すると解釈するのが自然であるが、採算性が見えにくい大規模投資案件であればあるほど、日本企業は出資者として手を挙げにくくなる。
本覚書には「日米両国間の行政上の了解であり、法的拘束力のある権利・義務を生じさせるものではない」と記載されているが、
前述の関税リスクを考慮すると、日本企業がどの案件にも出資しないという選択肢があるとは考えにくい。
尚、日本政府が7月25日に公表した内容では「政府系金融機関が最大5500億ドル規模の出資・融資・融資保証を提供することを可能とする」としており、
翌26日に赤澤大臣が「出資が占める割合は1%か2%になる」と述べている。
ならば、本覚書には記載がないが、もし仮に米国も同じ認識でいるとしたら、日本からの資金提供のほとんどは政府系金融機関および融資保証を受けた民間金融機関による融資となり、これら融資リスクの判断も一層重要となる。
既にラトニック商務長官は、アラスカのLNG開発プロジェクトを候補案件として挙げている。この案件は投資額が大きいことや技術的な難易度が高いことなどから長年実現していない(投資リスクが大きい)。
一方で、トランプ大統領が強い関心を示していることから投資案件に選定されるか、その動向が注目されている。
https://instituteofgeoeconomics.org/research/2025100101... 自民党総裁選候補の高市早苗前経済安全保障担当相は28日、日米関税合意に盛り込まれた5500億ドル(約80兆円)の対米投資について、再交渉も辞さない姿勢を示した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-28/T3A0X... 「国益を損なわなかった」ってことにしないように
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