>>71 結論から言うと、その映像は地球(ヒューストン)からの遠隔操作によって撮影されました。
撮影したのは「月面車」のカメラ
あの映像が撮影されたのは、アポロ15号、16号、17号の後半3ミッションです。これらのミッションでは
月面車(LRV)が導入されており、その先端には「GCTA(Ground-Commanded Television Assembly)」
という高精度のテレビカメラが搭載されていました。
宇宙飛行士たちは帰還する際、月面車を着陸船から少し離れた場所に駐車しカメラを着陸船に向けた状態
で自分たちだけが船に乗り込みました。
2.6秒のタイムラグとの戦い
最大の技術的ハードルは、地球と月の間の通信遅延でした。
* 地球から送った指示が月に届くまでに約1.3秒。
* 月からの映像が地球に届くまでにさらに約1.3秒。
* 合計で約2.6秒のタイムラグが発生します。
つまり、ヒューストンの管制官が画面を見て「あ、ロケットが上がった!」と思ってからカメラを上に
動かす操作をしても、その信号が届く頃には、ロケットはすでに画面の外へ消えてしまっているのです。
「伝説のカメラマン」エド・フェンデル
この不可能に近い操作を成功させたのが、NASAの通信エンジニアであるエド・フェンデルです。
彼は、着陸船が点火する正確なタイミングを秒単位で把握し「まだロケットが動いていない(ように見
える)時点」で、あらかじめカメラを上に向ける操作を開始しました。2.6秒後の未来を予測して操作を
行う「置き去り撮影」のような職人技です。
経験を積んだ最後のアポロ17号の映像は、パン(水平移動)とチルト(垂直移動)が見事に決まり上昇
していく宇宙船を完璧にフレームに収め続けました。
映像を見ると、ズームアウトや追跡が驚くほどスムーズなため、「人が撮っているのでは?」と感じる
のも無理はありません。
専用のコントローラー: NASAは、この操作のために特製のジョイスティックとカメラの駆動モーター
を非常に精密に制御するシステムを開発していました。
事前の猛特訓: フェンデルたちは、打ち上げのタイミングに合わせて、いつレバーを動かせばいいか、
何度もシミュレーションとリハーサルを繰り返していました。
実は、アポロ15号と16号の時は、カメラの不調やタイミングのズレにより17号ほど完璧には追従でき
ていませんでした。17号の映像があまりに完璧だったことが、皮肉にも「出来すぎている(捏造だ)」
という疑念を生む一因にもなったと言われています。
この「2.6秒先の未来を追う」というエンジニアたちの執念が、あの歴史的な「月からの離陸シーン」
を私たちに届けてくれたのです。
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