公園の子どもの声や除夜の鐘は〝騒音〟? 研究チームが分析すると…
大学研究者らが科学的アプローチで実証
サイレント・マジョリティー(物言わぬ多数派)にとって子どもの声は「騒音」ではなく「魅力」―
そんな研究成果を、大学の研究者らがまとめました。
近年、子どもの声がうるさいとの近隣住民の苦情をきっかけに、公園が廃止されたり、保育園の新設が
中止されたりする事例があります。研究チームはこうした事例について、サイレント・マジョリティーの意見が
可視化されてこなかったために、一部の声高な少数派(ノイジー・マイノリティー)の意見が反映されてきた
可能性があると指摘し、苦情の発信元がどのような人で、どのような理由で苦情を申し立てたのかを詳細に
分析すべきだと指摘しています。
明治大学商学部の加藤拓巳准教授、NEC、因果分析AIソリューションを提供する企業・
hootfolioの共同研究チームは「音が公園の魅力に与える印象」を分析しようと、20~60代の2250人を対象に
「公園の動画を見てもらって、動画から受けた印象を聞く」という実験をしました。
異なる公園の画像に、それぞれ「子どもの声」「鐘の音」、日常にある騒音の代表として「電車の音」を挿入した動画を作成。
動画の長さはいずれも10秒で、音量の大きさもそろえました。
「この公園に魅力を感じるか」の回答を見ると、子どもの声では41.4%が肯定的な回答をした一方、鐘の音で肯定的な
回答をしたのは34.3%、電車の音は28.4%でした。また、公園の印象について自由回答で答えてもらい、その文章を
分析しました。よく出てきた50の単語について調べたところ、子どもの声を聞いた人の9.5%が「楽しい」という言葉を
書いたといいます。電車の音と鐘の音を聞いて「楽しい」と書いた人はともに0.8%でした。
「うるさい」は、電車の音では13.8%が記述したのに対して、子どもの声では6.6%、鐘の音では0.7%でした。
こうした結果から、子どもの声や鐘の音は多数派にとっては騒音ではなく、むしろ魅力だと実証できたと結論づけました
チームは、苦情に適切に対応するためには、苦情を受けた場合、その発信元がどのような人で、どのような理由で苦情を
申し立てたのかを詳しく分析すべきだと指摘します。実態とかけ離れたノイジー・マイノリティの意見を濃く反映してしまう
リスクがあるからです。
加藤さんは「都市政策において、サイレント・マジョリティーを無視し、ノイジー・マイノリティーに影響を受けた政策は、
全体の評価と乖離する懸念があります。実際、鐘の音や子どもの声に対しては、全体としては肯定的な評価です。
市民全体のエビデンスなきまま意思決定をすると、都市の風情や活気が失われていくリスクが大きくなってしまうと思います」
と話しています。
研究成果をまとめた論文「都市の生活音に対するサイレントマジョリティーの印象の可視化 ―鐘の音と子どもの声が
公園の魅力に与える影響―」は、日本感性工学会講演論文集に掲載され、学会の優秀発表賞を受賞しました。
記事全文
https://withnews.jp/article/f0250522001qq000000000...
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